環境

環境課題への取り組み

当社グループでは「脱炭素社会」、「資源循環」、「自然との共生」の3つの課題について、2025年までの中期環境目標を設定し、具体的な取り組みを実施しています。気候変動は世界的に重要な課題であり、長期的な取り組みが必要となっています。2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、取り組みを進めています。

環境理念・方針

環境理念

環境課題に対するグループ共通の方針として「環境理念・方針」を定め、本方針に基づいて環境課題の改善に関する取り組みを継続的に行います。

環境方針

ー前文ー
フォスターグループは、製品のライフサイクルにおいて、環境と調和するテクノロジーの追求により、「脱炭素社会」、「資源循環」、「自然との共生」を目指し、一人一人が、環境へのやさしさを優先して行動します。

  1. 環境マネジメントシステムの継続的改善、及びステークホルダーとの積極的なコミュニケーションと連携により持続可能な社会の実現に貢献します。
  2. 「脱炭素社会」の実現 原材料の調達から製造、輸送、販売、廃棄を含むバリューチェーン全体でCO2排出削減に取り組みます。
  3. 「資源循環」の実現 グループ全体の活動及び製品開発において資源の有効活用を推進し、廃棄物削減に努めます。加えて製造工程における水資源の適正な使用に取り組みます。
  4. 「自然との共生」の実現 生物多様性の保全に配慮した活動の推進、及び化学物質管理による汚染予防・環境負荷低減に努めます。
  5. グループ全体の活動に関連する国内外の環境法規制、及びその他要求事項を順守します。
  6. グループの活動に携わる人々への環境活動の啓蒙や従業員への教育を通じて、環境活動を実践できる人財を育成します。

【1993年7月トップマネジメントの承認により発行。2021年3月改訂】

中期環境目標2025

2020年に設定した中期環境目標2025の達成に向けて製造拠点と協力し、ライフサイクル視点で環境負荷の削減活動を継続しています。

課題 2020〜2025年
脱炭素社会 CO₂排出量削減(Scope1、2、3) Scope1,2 CO₂総排出量を2018年度比30%削減
Scope3 CO₂総排出量を2018年度比3%削減
資源循環 製品の省資源化 ・環境対応技術の開発
製造工程の改善 ・廃棄物:危険廃棄物総発生量を2018年度比5%削減
・水使用量の削減(水リサイクルの推進と改善)
自然との共生 化学物質管理 ・社内標準、法令に基づいたグローバル管理体制の構築
生物多様性保全 ・生物多様性方針、中期活動計画の策定
ステークホルダーとのパートナーシップ ・サプライヤーとの協働体制づくりと協働活動の実施

環境活動実績

生物多様性の保全活動について

中期環境目標「自然との共生」の課題の一つとして、「生物多様性保全」を掲げ、生物多様性に関する講演会や研修の実施、また身近な自然の観察会や近隣のクリーン活動を継続しています。現在はTNFD(Task Force on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示に向けて情報収集等の準備を進めています。

水リスクへの対応

各拠点では、取水、排水について各地域の法規制に基づいた基準を設けて管理しています。本社では、世界資源研究所(WRI)の水リスク評価ツール“AQUEDUCT”を用いて、各拠点の地域の水リスクを把握しています。2020年からは中期環境計画で「水使用量の削減」を掲げ、水リスクへの対応に取り組んでいます。

製品含有化学物質の管理

製品に含まれる化学物質による環境への影響をできる限り少なくするため、RoHS 指令、REACH規制を始めとした各国の法規制やお客様の要請を反映した独自の環境負荷物質管理標準を定めています。これに従って購入する部品・材料の管理を行い、規制対象となる物質を含まない製品を提供しています。このような体制のもとで部品・材料の化学物質含有情報を効率よく収集し、サプライチェーンの中で必要な情報を的確に伝達するためのマネジメントシステムを構築しています。
また、情報伝達を確かなものとするために、年度毎に海外拠点を中心として、お取引先への説明会を実施しています。

環境マネジメント体制とISO14001認証

本社およびすべての海外製造拠点で ISO14001 の認証を取得し、フォスターグループの環境理念と中期環境目標を展開し、本社では、それぞれの拠点での活動内容を把握し、実績を確認しています。

フォスターグループの環境対応の取り組み

水資源の有効活用

当社はスピーカの音質を決める上で最も重要な振動板を自社で生産していることが、強みの一つです。しかし振動板に使用する紙製の部品を製造する工程においては、紙の原材料を水に分散させた材料を抄く“ 抄紙工程 ” が必要であり、大量の水を使用します。本社および番禺工場 ( 中国 ) では、排水の再利用の検討を長年かけて進めており、2023 年 12 月末の時点で抄紙工程で使用する水の 60% に再生水を使用し、資源の有効活用をしています。
また、排水の再生化プロセスの中で回収した紙の原材料についてもリサイクルの検討を進めており、サブパーツに該当する紙リング等への採用を進め、廃棄材の6% を再利用しました。今後は衣類等で進められている廃棄材の再利用を参考に廃棄材を使用した振動板等への採用を進め、さらなる廃棄材料を削減するアクションを進めていきます。


最終濾過タンク


中間処理


処理後

昭島市まちづくり企業サミットへの参加

2023年12月に開催された、昭島市が主催する「第2回昭島市まちづくり企業サミット」に参加しました。第2回目は「環境」をテーマに「カーボンニュートラルシティ実現に向けた官民連携のまちづくり」について、近隣企業との意見交換と当社活動の報告を行いました。

本社社屋の取り組み

「昼光利用照明制御」「外気導入冷房システム」「氷蓄熱空調システム」「ダブルスキン」等による環境負荷低減技術を採用しました。昼間電力のピークカットやクールビズ・ウォームビズの推進、昼食時の館内消灯、また全館LED 化を推進し、電力使用をさらに抑制しています。2024年9月からは、再エネ発電所の電力であることが認証された電力※を使用し、本社で消費する電力はすべて再エネとなる見込みです。

※非化石証書(再エネ指定)を用いた、実質再生可能エネルギー100% および二酸化炭素実排出係数をゼロとする電力

国内における電子マニフェストの導入

マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、排出事業者が自ら排出した産業廃棄物について、排出から最終処分までの流れを一貫して把握・管理することができる仕組みであり、それを電子化したものが電子マニフェストです。この導入により、事務処理の効率化を図ると共に、データの透明性を確保し、不法投棄を未然に防止し、排出事業者としての処理責任を果たすことができます。一元管理することで法令順守強化にも繋がります。

社外とのコミュニケーション

Green Value Chain促進ネットワーク

環境省が推進するGreen Value Chain促進ネットワークに、企業会員として参加しています。

気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)

2020年より、「脱炭素化を目指す世界の最前線に日本から参加する」に賛同し気候変動イニシアティブに参加しています。

環境デジタルプラットフォーム

2023年3月、コニカミノルタ株式会社が運営する、環境デジタルプラットフォームに参加しました。

環境対応製品

スピーカ

次世代の環境対応自動車向けスピーカの要素技術開発・量産導入の動きを加速させています。

軽量化

CAE 解析を用いての最適化設計により、樹脂部品や金属部品の最適化、新材料として熱可塑性の炭素繊維強化樹脂を検討しています。また、懸念される電気自動車の航続距離の延長や電費の効率化に繋がる軽量化技術を盛り込んだ自主開発品の製品化に取り組んでいます。


軽量化技術採用スピーカ

VOC(揮発性有機化合物)低減

生産現場環境、車室内環境のVOC低減に配慮した取り組みとして、部品結合に使用している有機溶剤タイプの接着剤を削減し、溶剤レス接着剤の開発・量産採用を推進しています。超音波溶着等、接着剤以外の結合方法の開発にも力を入れています。
※中期目標を、これら環境対応技術を盛り込んだ車載向けスピーカの量産採用を30%(売上高比率)とし、開発・導入を継続します。

CO₂排出削減

スピーカ製造における消費電力を減らし、CO₂排出量を削減するための設計開発活動を実施しています。部品結合の改善や変更を行い、乾燥炉の使用を段階的に減らすことにより、中期CO₂排出量削減目標の達成に向けて開発対応しています。

アクチュエータ

CASE*やVR/AR等に新しいユーザーインターフェースとして用いられるハプティック(触覚)用振動アクチュエータデバイスにも、環境配慮を積極的に取り入れています。VOCに配慮して有害な溶剤を含まない接着剤を採用し、製品省力化のためにUV照射による速硬化やパルスヒートによるはんだ工程省力化を実現しました。また、はんだ使用量低減のために抵抗溶接の開発に取り組み、実用化しました。有害な溶剤を含まない接着剤の使用率100%を継続していきます。
*CASE:Connected(つながる)、Autonomous(自律走行)、Shared(共有)、Electric(電動)を意味する言葉


車載用薄型アクチュエータ

ヘッドホン & ヘッドセット

製品設計、工程設計への環境対応を積極的に取り入れています。製品での環境負荷物質の削減には各国の法的要求や、RoHS2 等の最新情報を取り入れ、お客様への提案や水平展開を進めています。また、製造時に消費するエネルギー、廃棄する材料の削減には、廃材の極小化、設備導入による原材料の再利用、天然素材を用いた商品開発の継続が必要です。さらに、電子回路を有する製品には省電力部品を採用し、低消費電力製品の開発に取り組んでいます。ヘッドホン・ヘッドセットに使用されているマイクロスピーカに関しては、VOC の低減に配慮するために、新規設定マイクロスピーカにトルエン不使用の接着剤を導入することで、環境にやさしい商品づくりを行っています。(溶剤系接着剤を使用してる部位の置き換えが対象)
目標達成のための仕組みとして、開発 ・ 設計段階でトルエン使用の可否を確認し、その後も毎月トルエン不使用製品をチェックする社内体制を構築しています。また、代替接着剤も継続的に検討しています。

トルエン不使用製品開発目標と実績


環境配慮設計を施し環境配慮を施したマイクロスピーカ例
(ヘッドホン用口径35mm マイクロスピーカ)


省電力部品を採用した開発製品例
(Bluetooth ワイヤレスイヤホン)

環境月間

環境月間(本社)

環境講演会

役員および部門長、グループリーダーを対象に、「生物多様性とは何か、なぜ生物多様性の保全が必要なのか」について外部講師による講演会を実施し(ウェブで開催)、当社で取り組むべき課題について考える機会としました。

その他の活動

身近な自然の写真投稿や環境にやさしい昼食メニューの提供等、さまざまな立場で環境への取り組みについて考えるきっかけとしました。

本社 昭島市内クリーン運動(ミニクリーン活動)

コロナ禍の影響で延期や中止、在宅勤務の多い中、参加者は年間162名(参加30.7%)と前年度比+17.4%と増え、ごみの総重量は43.47Kgと増加しました。また、中学生にも職場体験を通じて活動に参加いただきました。今期も引き続き、昭島市「市内クリーン運動」に参加する予定です。

ミニクリーン活動

環境月間(海外拠点)

中国

社員の環境保全に対する意識向上を目的として、各工場周辺の清掃活動を行いました。

清掃活動

ベトナム

近隣の清掃活動、構内の植栽活動や、環境教育を行いました。

植栽活動

教育活動

海岸の清掃活動

近隣の清掃活動

ミャンマー

教育活動、構内の植栽活動、近隣の清掃ボランティア活動を行いました。

近隣の清掃ボランティア活動

アメリカ

構内の植栽や、近隣の小学校に工作の材料として使用済み段ボールの寄付を行いました。

植栽活動

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言について

環境や気候変動に関するテーマを重要な課題と考え、2022年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明すると共に、TCFDの効果的な情報開示や適切な取り組みについて、賛同企業や金融機関等が議論を行うTCFDコンソーシアムに参画しました。
気候変動におけるリスクと機会を把握した上で、社内外の知見を生かしながら引き続き有効な対策を推進すると共に、TCFDの提言に沿った情報開示を積極的に進めています。

※気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):各国の中央銀行・金融当局や国際機関が参加する金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した、気候変動が経営に及ぼす影響の試算や情報開示のあり方について考えるタスクフォース。企業等に対し、気候変動関連リスクおよび機会に関する情報開示を推奨。

1.ガバナンス

サステナビリティを重要なテーマとして捉え、2021年3月にESG経営を宣言。優先課題であるマテリアリティの一つとして「脱炭素社会」「2050 年ゼロエミッション」を目指すことを掲げ、その目標や削減活動は、全社員に展開され推進されています。
また、ESG経営を推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会が月次開催されています。同委員会は、気候変動に関する課題に対し、サステナビリティ担当役員、各本部長および本社・グローバル拠点の各部門から任命されるサステナビリティ推進責任者出席のもと、課題認識、方針・施策を審議・決定し、進捗状況を共有・モニタリングするものです。
取締役会は、経営課題に関わるTCFDの賛同表明・情報開示、削減目標および施策等を審議・決定しています。また、同委員会の審議状況や進捗状況に関し、定期的もしくは必要に応じて報告を受け、当該業務執行状況を監督する役割を果たします。

2.戦略

TCFD 提言が提唱するフレームワークに基づいて、2030 年時点の外部環境の変化を検討し、気候変動が当社に与える影響を分析しました。リスク・機会の分析にあたっては 1.5℃と 4℃シナリオを採用し、移行リスクに関しては気候変動の緩和に向け、政策や市場がどのように移行するかを考えました。また、物理的リスクに関しては、気候変動に伴う気象災害の頻度や影響がどのように変化するかを分析しました。
特定したリスクおよび機会の対応については中期事業計画へ展開すると共に、今後は自社への財務的な影響についても検討を進めます。また、インパクトの大きい一部の車載関連事業を対象に分析を行っていますが、対象外となった事業も含めて、引き続き分析を進めます。

気候変動リスクと機会に関する事業影響

・対象事業:当社の主要事業である車載ビジネスを対象
・事業活動への影響度:「大」「中」「小」の3段階で評価

[使用したシナリオ]

移行リスク: International Energy Agency(IEA)(※1
・World Energy Outlook 2022: APS (※2 、STEPS (※3
・Net Zero Emissions by 2050 Scenario (※4

物理的リスク: Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC) (※5
・第6次報告書:SSP1-1.9、SSP5-8.5 (※6

※1. IEA/International Energy Agency:国際エネルギー機関
※2. APS/Announced Pledges Scenario:表明公約シナリオ
※3. STEPS/Stated Policies Scenario:公表政策シナリオ
※4. NZE/Net Zero Emissions by 2050 Scenario :2050年ネットゼロ排出シナリオ
※5. IPCC/Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル
※6. SSP/Shared socioeconomic pathways:共通社会経済経路

3.リスク管理

経営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、代表取締役社長を委員長とするリスク・危機管理委員会を設置しています。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っています。
特に気候変動に関連するリスクについては、同委員会の総合リスク評価においてこれをトップリスクの一つとして位置づけ、サステナビリティ委員会がリスクの識別・評価し、対応策を講じる等、実効性を高めています。
当該リスク管理、対応策の状況等については、取締役会においても情報共有が行われ、全社のリスク・危機管理について監督およびモニタリングを実施すると共に、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を図ることで、全社における総合的リスク管理の強化を進めています。

4.目標と指標

2021年3月にサステナビリティ実現へ向けて「ESG 経営宣言」を制定し、「脱炭素社会」、「ゼロエミッションへのたゆまぬ努力」を中長期的に目指すことを掲げました。これらの宣言のもと、パリ協定の1.5℃目標に沿って2030年までの中期環境目標(Scope1、2)の見直しを行いました。また、新たに2050年までの長期目標を設定しています。

1. 2030年中期削減目標

・Scope1、2:2030年までに2018年比で50%削減
・Scope3:2030年までに2018年比で15%削減

2. 2050年長期削減目標

・2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す

これらの目標を達成すべく、CO₂削減アクションプログラム【Ver.2024】を策定しました。
当社グループ全体において本社、拠点が一体となり、CO₂削減活動を加速させます。

3. 具体的な削減施策

1.自社による省電力化(地道活動/革新的活動)

 【地道活動】

  具体的施策:
  ・運用改善:運用、メンテナンス、保温・断熱改善、等
  ・省エネ設備の導入:各設備の改造・更新

 【革新的活動】

  活動内容:新しい製造方法・設計仕様の研究・導入
  具体的施策:
  ・次世代スピーカプロジェクトによる革新的技術開発、等

2.再生可能エネルギー電力の調達

  ・費用対効果を検証のうえ、電力会社からの購入電力を再エネ100%メニューに切替

3.自社による再生エネルギー発電

  ・自社太陽光発電設備の導入

4.グリーン電力証書購入によるオフセット(不足分)

  ・海外工場におけるグリーン電力証書の購入

4. 具体的なKPI

・各拠点毎の「電力使用量÷売上高」を省電力化活動のKPIとして設定
・2023年度の実績よりも4%少ない電力消費量で、同じ売上高を計上できる体制を2024年末までに各拠点に築くことを目標としました。Scope1、2の2025年度中間ラップ目標(2018年度比30%削減)をクリアし、2030年度目標(2018年度比50%削減)の確実な達成を目指します。