フォスター電機のサステナビリティ

担当取締役メッセージ

2021年3月に「ESG経営宣言」を制定し、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)を軸とした経営に取り組むフォスターの基本姿勢を社内外に発信しました。とりわけ、脱炭素社会の実現に向けては、これを経営の最重要課題の一つとして位置づけ、取り組んでいます。具体的には「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」という長期目標を掲げ、そのマイルストーンを「2030年までに2018年比で50%削減」とし、取り組みを一層加速しています。持続可能な社会の実現に向け、フォスターグループの技術力を結集することで、「差別化を図る競争優位の源泉」へと高めてまいります。

また、持続可能な社会の実現に向け、「環境」に加えて「人権」に関する社会的関心・要請が高まりつつあります。日本はもとより、アジア・米州・欧州でグローバルに事業を展開するフォスターグループとしては、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権尊重の取り組みをより一層進め、年齢・性別・国籍・信条等の異なる多様な人々が、お互いを敬い、ありのままを受け入れることのできる職場の提供、さらには社会の実現を目指す姿勢をより明確に示すべく、新たに「フォスターグループ人権方針」を策定しました。

社会との繋がりにおいては、SDGs が掲げる「共生社会」「多様性」の尊重に向け、パラスポーツである「日本ゴールボール協会」へのゴールドパートナーとしての協賛を開始しました。これは、「日本ゴールボール協会」が掲げる「『見えない』からこそ『聴く』を大切に」という基本理念が、私たちが掲げる「未来社会に音で貢献する」というミッションと通じ合うものがあることから、活動を共にさせていただくものです。

こうした取り組みの結果、フォスターグループのサステナビリティは、各種外部評価機関から高い評価を受けています。

今後もフォスターグループおよび私たち社員一同は、長年の歴史と信頼を背景に積み上げてきた財務価値と、自社の「強み」である知的資本、人的資本、製造資本、社会・関係資本、自然資本といった非財務価値との融合により、ステークホルダーの皆様の期待や要請に的確に応えながら、さらに企業価値を高め、自社のみならず社会のサステナビリティに、より一層貢献してまいります。

ESG経営宣言

2021年に、中期事業計画の策定と併せて「ESG 経営宣言」を制定し、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)を軸とした経営に取り組むフォスターの姿勢を社内外に発信しました。すべての企業活動の原点である「社員」のウェルビーイングを活動の基点として、自社そして社会双方のサステナビリティ実現に向けて、中長期的に ESG 経営に取り組む当社のコミットメントおよび当社のありたい姿を具体的に表現したものです。

フォスターグループ ESG経営宣言

ESGへの取り組みは、社是「誠実」から発しています。社是「誠実」を「Foster Rhythm*」では「常に真実を伝え、人と地球にやさしく、真心をこめてサービスすること」としています。
フォスターにおけるESG活動の中心は「社員」だと考えています。全ての企業活動の原点である社員をハッピーにできない企業にESGを推進することはできません。その上で「社員のBe Happy 80%」をESG活動の基点とし、関わりあうすべてのステークホルダーの期待に応えるべく未来社会に貢献していきたいと考えています。100%ではなく、80%をハッピーの基準とします。自社、自分だけの満足ではなく、他のステークホルダーの満足への思いやりの余地を残しているためです。

*Foster Rhythm : 社是「誠実」を含む企業理念を全世界の社員に理解できるよう、社員自らが考え、平易な言葉で置き換えたもの

フォスターはESGに強くコミットし、長期的視点で以下の実現を目指します。
  • 1. 「脱炭素社会」、「資源循環」、「自然との共生」の推進に向けた取り組み、『ゼロエミッション』へのたゆまぬ努力
  • 2. ライフステージや人生目標に合わせたワクワクのびのびとした働き方
  • 3. 年齢、性別、国籍、信条等の異なる多様な人々が、お互いを敬いありのままを受け入れることのできる社会
  • 4. お客様、お取引先に信頼される、真のスペシャリスト
  • 5. 製品品質や業務品質など、あらゆる場面での『ゼロディフェクト』の定着
  • 6. 音と振動の技術を通じたソリューション提供による、人々の生活の質の向上
  • 7. コーポレートガバナンス強化に資する厳格なリスクマネジメントの遂行とコンプライアンス体制の拡充
  • → 音と振動の力で人々の生活を豊かにし、すべてのステークホルダーに幸せと持続的な未来を届けること、それがフォスターの願いです。

サステナビリティ推進

フォスター電機は、社是として「誠実」、ミッションとして「未来社会に音で貢献する」、ビジョンとして「音に関わる製品やソリューションを通して世界中に豊かで快適な空間・楽しさ・喜び・安心安全を提供する」ことを掲げて活動しています。
その根底にはサステナビリティの理念が深く根付いており、創業時から一貫して社会から必要とされ発展し続けるサステナブルな企業を目指してきました。

自社のみならず、社会双方のサステナビリティの実現に向けて、E(環境)・S(社会)・G (ガバナンス)の側面を重視した経営に取り組んでいます。

フォスターグループサステナビリティ憲章

当社は2006年にCSR憲章の初版を発行し、2010年にアメリカの電子工業会が定めたCSR基準であるEICCを基本方針として採用することで、グローバルな汎用性・普遍性を追求し、内容を刷新しました。

さらに、2022年には従来取り組んできた企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility、CSR)だけでなく、自社そして社会双方のサステナビリティを追求することを明確にするために、CSR憲章を改定し、「サステナビリティ憲章」を制定しました。すべての役員・社員が、企業のサステナビリティ(ESG 要素を含む中長期的な持続可能性)を重要な課題として捉えていることを周知し、日々の活動の中でサステナビリティを意識し、果たすことを目的としています。

※Electronic Industry Citizenship Coalition(2017年にResponsible Business Allianceに改名)

サステナビリティ推進体制

代表取締役社長を委員長とし、関連部門の代表をコアメンバーとするサステナビリティ委員会を、本社に設置しています。サステナビリティ委員会は、実行委員長であるサステナビリティ担当役員出席のもと、本社および各拠点のサステナビリティ責任者、実務担当者により月次で開催され、グループ全体におけるサステナビリティ推進活動のモニタリングと連携活動を担っています。サステナビリティ委員会が諮問した重要事項は、社内外の取締役が参加する取締役会で審議・承認されます。また、同委員会の下部組織として、環境委員会を設置し、テーマごとに目標およびその達成に向けた実施計画の策定、気候変動問題への取り組みを始め、具体的な対応等を協議し、取り組んでいます。

サステナビリティ推進体制図

2023年度にサステナビリティ委員会で報告・審議された主なトピック

  • ・マテリアリティの見直し(ダブル・マテリアリティの設定)
  • ・マテリアリティKPIの進捗・振り返り
  • ・フォスターグループ人権方針の制定
  • ・サステナビリティ情報開示(CSRD、TCFD・TNFD 対応)
  • ・外部ESG評価機関・お客様調査に基づくESG重要課題
  • ・2023年度CO₂削減アクションプログラムの策定・進捗結果
  • ・環境内部監査、マネジメントレビュー、ISO14001審査の結果
  • ・お客様CSR監査の進捗状況
  • ・統合報告書の発刊
  • ※取締役会で審議、承認

マテリアリティ

マテリアリティ(重要課題)の見直し・新マテリアリティについて

当社は、事業環境の変化や近年高まる情報開示の透明性に対する要請に応えるため、2024年にマテリアリティの見直しを行いました。具体的な内容としては、財務と社会・環境の両側面から分析と評価を行い、従来のESGマテリアリティを更新しました。また、経営戦略と整合させるために、経営方針や現在策定中の次期中期事業計画の策定プロセスおよび方向性を反映させました。

特定方法については、欧州におけるCSRD(企業サステナビリティ報告指令)のサステナビリティ報告基準であるESRS、および GRIスタンダードのマテリアリティ特定プロセスを参照し、「自社が社会・環境に与える影響」および「社会・環境課題が財務に与える影響」の二つの視点から重要課題を特定するダブル・マテリアリティの考え方を採用しました。そのプロセスは次のとおりです。

(1)以下の 4 つの分析プロセスを通じて経営およびサステナビリティに関連する顕在的・潜在的な課題を抽出しました。

  • ① バリューチェーン全体における事業と社会・環境との関係を洗い出し、課題を抽出
  • ② 主要なステークホルダーが抱えている課題や関心、自社に対する期待を分析し、課題を抽出
  • ③ 今後の事業環境に大きな変化を及ぼす主要なメガトレンド(2040年までの時間軸)を分析し、課題を抽出
  • ④ 経営方針、現および新中期事業計画等社内文書を分析し、自社の将来計画に含まれる課題を抽出

(2)抽出された課題を整理・集約したうえで、部門横断的なメンバーにより、「自社が社会・環境に与える影響(インパクト)」と「社会・環境課題が財務に与える影響(リスク・機会)」それぞれにおいて、規模や発生可能性などの観点から影響度の大きさを評価しました。最終的に B(事業)、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の分野における新マテリアリティ案を策定しました。

(3)新マテリアリティ案は、ESG 各分野の担当者と責任者が参加するサステナビリティ委員会で検討を重ねたのち、取締役会で審議を行い承認されました。

今回の特定プロセスでは、分析に基づいた根拠をもとに当社が優先すべき重要課題を明確にしました。今後も事業環境や事業方針の変化に合わせて、ステークホルダーへのインパクトや重要度を継続的に評価し、見直しをします。また、財務面を強化しつつ、ESG課題に積極的に取り組み、自社と社会の持続可能性を同時に追求し、ステークホルダーの期待に応えながら価値を創出していきます。

マテリアリティ特定プロセス

新マテリアリティ(2024年度〜)

マテリアリティ(重要課題)の取り組みについて(2023年度までの取組状況)

マテリアリティ項目 目標(KPI) 2023年までの
取組状況
対応するSDGs
環境(E) 脱炭素社会 ・Scope1&2の総排出量 ・2025年目標:
2018年度比30%削減
・2030年目標:
2018年度比50%削減
2018年度比で
35%削減
・Scope3の総排出量 ・2025年目標:
2018年度比3%削減
・2030年目標:
2018年度比15%削減
2018年度比で
10%削減
資源循環 軽量化
 ⇒車載用スピーカ従来品に対し、さらなる軽量化へ向けた要素技術開発
2025年目標
・100g未満のスピーカに向けた要素技術を盛り込んだ開発品の製作

2023年目標
・110g未満に向けた軽量化
・軽量化技術を盛り込んだ自主開発品の製作
軽量化技術としてフレーム,振動板材料にCFRTP※1を盛り込んだ108gの自主開発品の製作完了
環境対応スピーカ*2の採用率の向上 環境対応スピーカ*2の採用率の向上
 ⇒車載用環境対応スピーカの採用率(売上高比):2025年に22%
・2023年度:18%
・2024年度:20%
・2025年度:22%
2023年度:22.1%
自然との共生 VOC削減*3 新規モバイルオーディオ製品のうち「トルエン不使用製品」の比率:2024年までに100%

・2023年度:80%
・2024年度:100%
2023年度:100%
新規立上げ8機種のうち8機種とも達成
社会(S) 品質(製品の安全性と信頼性) 社会的影響度の大きい事故(人命・財産・環境、等に重篤な影響を与える不具合)件数 0件の継続 0件
サプライチェーンマネジメント CSR自主アセスメントを配布したサプライヤーからの回収率 ・重要サプライヤー*4CSR自主アセスメントの実施率100% 100%
・重要サプライヤーCSR適合率*594%以上 100%
責任ある鉱物調達調査におけるサプライヤーからの回答回収率 ・既存サプライヤー:99%以上 99%
・新規登録のサプライヤー:100% 100%
ワクワク働ける職場づくり ・エンプロイーエンゲージメント調査でポジティブな回答をした社員の比率(本社) 71.8%(2022年実績値)以上 75.0%
※ストレスチェック・従業員満足度調査受検率:93.3%
  • ①ワークエンゲージメント:72.3%(ポジティブな回答者比率)
  • ②プレゼンティーズム:22.9%(SPQ、回答者平均損失割合)
  • ・従業員一人当たりの総労働時間(本社) 総労働時間月平均153時間以下 159.9時間
    ・特定保健指導受診率(本社) 80% 79.7%
    ・定期健康診断受診率(本社) 100%維持 100%
    ・介護離職者(本社) 0%維持 0%
    ダイバーシティ&インクルージョン ・女性管理職比率(本社) 2025年度30% 13.9%
    (2024年3月末現在)
    ・海外人財比率(本社) 2025年度30% 12.2%
    (2024年3月末現在)
    ・障がい者雇用率(本社) 法定雇用率2.3%を上回る 2.0%
    (2023年度平均)
    ・男性の配偶者出産休暇および育児休業の取得率(本社) 100% 男性の配偶者出産休暇取得率100%
    男性育児休業取得率60.0%
    ・多様な人々が能力を発揮できる組織づくりを促す教育実施(本社) 女性や外国人の活躍を阻害するアンコンシャスバイアスの排除や、SOGI・LGBTQ+に関する理解を深めるための教育を実施する
    • 実施研修および受講率
    • ①新卒向け異文化コミュニケーション研修:100%
    • ②ハラスメント防止・メンタルヘルスセミナー:98%
    • ③新卒向けハラスメント研修:100%
    • ④今企業に求められるビジネスと人権への対応講座:71.5%
      その他、全社員向けに以下の講演会等を実施
    • ⑤女性取締役によるダイバーシティ講演会
    • ⑥仕事と介護両立セミナー
    ガバナンス(G) ガバナンス強化 コーポレートガバナンスの充実 ・コーポレートガバナンス・コード100%遵守 100%
    ・ガバナンスサイクルの推進(ガバナンスアセスメントに基づく体制・運用の改善) ガバナンス評価シート、経営管理評価シート等に基づく管理体制を改善
    コンプライアンスの徹底 ・コンプライアンス・テストおよびコンプライアンスアンケートの回答率100%の維持 100%
    ・内部通報制度の周知率100% 100%
    ・コンプライアンス研修の実施と満足度5段階中4以上の確保 平均で4以上を確保
    リスク・危機管理の強化 ・リスクアセスメントに基づくリスク・危機管理の体制・運用の改善 トップリスクおよびリスクトピックスの展開により、予見可能なリスクの検証と責任部門および対応状況を把握し、リスク・危機管理の体制・運用を改善
    ・重要項目*6のモニタリングを実施し、各項目の対応策年度内完了率:100% 100%
    • *1 CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics):炭素繊維強化プラスチック
    • *2 環境対応スピーカ:軽量化、VOC削減、はんだ低減、ドライプロセス採用等の環境配慮要素を一つでも含んでいるスピーカ
    • *3 VOC(Volatile Organic Compounds):揮発性有機化合物
    • *4 重要サプライヤー:当社の調達金額80%に該当する上位サプライヤー約50社
    • *5 CSR適合率:CSR自主アセスメント評価点66%以上を達成しているサプライヤーを適合とする(65%以下は不適合)
    • *6 1.BCP体制の検証とグローバル展開の継続 2.グローバルロジスティクス体制の構築 3.サプライヤーの事業継続性の管理 4.グローバルベースでの情報セキュリティ管理体制の強化 5.その他期中に生じる事象から予見するリスク

    人権尊重への取り組み

    近年、国際社会ではビジネスにおける人権への取り組みが重要性を増しています。当社では社是「誠実」のもと、人権を社会の重要課題と位置づけ、バリューチェーン全体のプロセスを通して人権尊重に取り組んでいます。2017年1月には「国連グローバルコンパクト」に加盟し、人権尊重や労働に関する人権擁護を含む10原則へのコミットメントを表明することにより、活動を推進しています。

    人権に関するガバナンス

    2003年に「フォスターグループ企業行動要綱」および「フォスターグループ社員行動規範」を制定しました。これにより、強制労働、児童労働、差別、ハラスメント、個人情報保護、安全衛生、責任ある鉱物調達等の側面において、すべての法律・法令、国際ルールおよびその精神・趣旨に則り、人権を尊重することを規定しています。また、「フォスターグループサプライヤーサステナビリティ行動規範」を制定し、お取引先様にもご協力いただき、サプライチェーン全体を通して人権の尊重を遵守しています。
    さらに 2024年には、フォスターグループが事業活動において人権を尊重し、人権侵害を防止・軽減・救済することを目指し、人権に関する最上位の方針として「フォスターグループ人権方針」を制定しました。この方針は、すべての従業員や取引先に適用されるものであり、人権に対する責任とコミットメントを示すものです。また、これにより社内外での人権リスクの管理と改善を行い、持続可能なビジネス活動を推進していきます。

    社員の人権尊重および啓発・浸透

    社員のウェルビーイングを大切にし、社員の人権尊重・差別禁止、ハラスメント防止、個人情報・プライバシーの保護、職場の安全衛生、労働関係法の順守等の観点から、一人ひとりの人権が尊重されるよう取り組んでいます。さらに社員への啓発・浸透を目的とする全社員向けのハラスメント研修や、ダイバーシティ推進活動の一環としてLGBTQ+に対する理解を深めるeラーニングを実施しています。内部通報制度に関しては、社員に対してコンプライアンス・アンケートを利用した周知活動を行っており、社内周知率は100%を維持しています。

    サプライチェーンにおける人権尊重

    お取引先様には「フォスターグループサプライヤーサステナビリティ行動規範」への同意書に署名いただき、人権侵害に関する項目を設けた取り組み状況の調査(CSR自主アセスメント)を実施し、必要に応じて是正依頼をしています。さらに鉱物調達においては、深刻な人権侵害を行う武装勢力の資金源になっていないことを確認するためのデューディリジェンス(責任ある鉱物調達調査)を行い、認定された精錬所のみから調達活動をしています。

    相談・通報窓口

    内部通報制度として、コンプライアンスホットラインおよびハラスメントヘルプラインの相談・通報窓口を設置し、さまざまなステークホルダー(当社グループの社員・役員、その家族および取引先の社員を含む)からの相談を受け付けています。厳正な調査に基づき人権への侵害が特定された場合は、通報者への報復・不利益がないことを確保した上で、救済・処分を行っています。