VOICES 08

プロの感性の再現を目指す 車内音場シミュレーション の可能性とは

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BACKGROUND

フォスター電機の主力事業である車載用スピーカ。
現在は実物の車を使って開発・提案をしていますが、
その現状を変えるかもしれない新しい取り組みがスタートしています。
それが「車内音場シミュレーション」と呼ばれる、
ソフトウェア上で車室内環境を再現する試み。
まだまだ発展途上にある技術ですが、
実現すれば物理的に車を用意するよりも効率的な提案が可能です。
あらゆることが手探りで始まったシミュレーション技術への挑戦と、
将来の展望を語ってもらいました。

  • YUICHI SAKAMOTO

    坂本 雄一

    技術本部 開発部
    部長

  • MANABU SASAJIMA

    笹島 学

    技術本部 開発部 
    音響技術開発課 課長補

  • ※インタビュー社員の所属、役職は撮影当時のものです

仮想空間に車内を再現し、
実車を使う従来の作業を
大きく効率化

坂本

私たちが研究している車内音場シミュレーションとは、コンピュータで自動車の内部を再現し「車内にどうスピーカを配置すると、どんな音が聴こえるのかをシミュレーションする技術」です。この技術を使えば、車内での反響など「音の波」を可視化できるので、車載オーディオのデザインや、スピーカの配置提案に大きく貢献できると考えています。

坂本

また、現在は車載オーディオの開発に、実物の車を使っています。実際にスピーカを車内に配置して試聴・測定をする必要がありますが、これには多くの費用と時間が必要です。例えば、スピーカの種類や配置を変えて3パターンを同時に試す場合は、車を3台準備したり、多くのリソースを費やすことになります。シミュレーションであれば、スピーカのパラメータ情報と、車内の3次元測定データを活用し、作業の効率化が可能です。

フォスター独自の
技術として確立へ。
手探りで進んだ3年間の
努力が結実

笹島

シミュレーション技術のメリットについて話しましたが、すぐにどんな車でも実行できる、というわけではありません。車内には凹凸や音を透過・吸収するさまざまな素材があり複雑な構造になっています。簡単なデータでは車内環境を再現できません。そのため、解析用のモデルデータを作るのは大変な作業で、外部に測定を委託すると、費用も大きな負担になります。メーカによっては車内データをいただける場合もありますが、実測と合わせたいので、自分たちで測定を行い、解析用モデルを作っています。そのために、トラバーサーという音圧分布を測定する機械を自分たちで作りました。機械の完成には時間と予算が必要でしたが、より正確に音圧分布を調べることで、車に乗らずに、車の中と同じような音の分布を再現することに近づけたと思います。

笹島

フォスターでは3年ほど前にスタートしたシミュレーション技術の研究開発ですが、最初はソフトウェアも測定機材もない状態でした。知識と技術を集め、社内のリソースをやり繰りして、ようやく形になってきました。実際に車内の形状をスキャンする測定と、シミュレーションを積み重ねたこともあり、フォスター独自の測定技術とシミュレーション技術が確立されつつあると感じています。

フォスターの能力で技術を発展。
聴き手が求める「理想の音」の
再現目指す

笹島

将来的にはシミュレーションソフトが再現した「車内で聴こえる音」を直接クライアントに聴いてもらいたいと考えていますが、まだ実現はしていません。しかし、フォスターがこうした技術を開発していることや、シミュレーションのメリットなどはクライアントにアピールできるので有効活用が期待されます。今後は車を用意しなくても、スピーカの位置や角度をこれくらい変えれば、もっと音の反射がよくなるなど簡単にテストできます。

坂本

このようなシミュレーション技術は、専門業者も存在する難しい分野ですが、自社でシミュレーションの高度な知見を持っていれば、今後の研究開発にも生かせると期待しています。フォスターには外部の業者が持っていないスピーカのデータがあるので、シミュレーション技術への応用もできると考えています。

坂本

現在は実車を使ったデモの音と比べて、どのくらいの精度でシミュレーション可能かを探っている段階です。実車で計測しているプロの人間の感性をシミュレーションでカバーできるようになるのが望ましいと思いますが、まだまだ難しい技術です。現実的には代替案としての確立を目標にしています。

笹島

最終的には聴く側の感性に合わせて音を調整し、聴き手が理想とする音を再現できる技術を目指したいです。あとは、さらに技術が発展して、最近注目を集めているVR空間でのシミュレーションができるような未来になれば、面白いですね。